県への要望書

私が定期的に栃木県知事へ送っている要望書です。

今回の知人の入園拒否を聞き、宮子さんを心配し公表することにしました。

JAZA、環境省、県、市、それぞれにみなさんの気持ちで訴えて頂けたら幸いです。

宮子さんがゾウ生を健やかに過ごせるよう切に願います。


栃木県知事 福田 様

こんにちは。秋田県在住の 「深草」(※名前を変えています) と申します。

宇都宮動物園にいるアジアゾウ、宮子さんのことについて知事にお話があり手紙を書かせて頂きました。お忙しいと思いますが、よろしくお願いします。


2016年5月末、東京にある井の頭自然文化園のゾウはな子が亡くなったことは、日本、および世界で大きな話題になりました。日本国内の声と世界の声の内容は少し異なり、世界中がはな子の飼育環境の悪さに驚き、改善を求めていました。しかし、ゾウ舎等の改善はなされないまま、はな子の長い人生は終焉を迎えました。

宇都宮にある民間動物園・宇都宮動物園にも1973年から飼育されている孤独なアジアゾウの宮子さんがいます。その飼育環境、飼育方法は、はな子同様に改善の必要があるものであると私は考えています。

ゾウの特性、本能、欲求を理解したうえで、改善・指導をお願いします。


【参考:ゾウはどんな動物なのか】

ゾウは一日16~20時間活動を続け探索しながら採食し続ける動物です。活動時間の90%以上を採食に費やしています。残りの時間を使って、水浴びをし、泥浴びや砂浴び、仲間とのコミュニケーション、睡眠などを行います。

この行動欲求を満たすことが重要で、退屈であることはゾウを【精神的】に追い詰めます。

アジアゾウの発する低周波は、1.6km先にまで届き、それだけ広範囲の移動やテリトリーを前提としています。

アジアゾウは群れで暮らす動物です。社会性、群れとのつながり、家族との愛情がとても強く、特に雌はともに子育てを分担したり、仲間を看病するなど、人間と同等もしくはそれ以上に愛情深い動物です。時には雄も他の雄と小さなグループを作ります。

アジアゾウは熱帯林、草原で暮らしており、高地にも登ります。さらに長距離を泳いで移動することも可能です。

人間と同程度に長い寿命の間、自然界のゾウは多様な人生を歩みます。人間よりも長い22ヶ月間の妊娠期間を経て生まれたゾウは、約4年間の母親による子育てとその後の15才程度で成人するまでの成長を群れの中で支えられます。伴侶を見つけ、子を産み、育てます。その人生はまるで人間と同じ経過時間をたどります。


【宇都宮における問題点】

①動物を本来あるべき場所から引き離し市民の娯楽に利用する立場であることから、動物たちの適切な飼育環境の確保は最優先課題であると認識しています。しかし、宇都宮動物園では、「適切な動物飼育環境の確保」することは大変困難であると思われます。

②動物の行動を誘発する環境エンリッチメントにより、 飼育動物の活動性と行動の多様性を高めることが求められます。環境エンリッチメントだけでは小さく変化のないエリア(例え1000㎡だったとしても)では動物本来の活動性や行動の多様性は高まりません。行動エンリッチメントはより重要であり、そのためのトレーニングを受けた十分人数のスタッフの配置が必要になります。宇都宮の場合は、ゾウの専門の担当者(飼育員)がいません。(他の動物と掛け持ちで担当している現状)

国内各地の動物園にいるゾウの運動場の広さを調べたところ、宇都宮が一番小さく(屋内外あわせて、102m2)、これはこれからも続く宮子さんの人生にとっては精神的・肉体的に大変問題ある事であります。

③昔から変わらないゾウの姿に懐かしさを感じと宇都宮の方は仰いますが、昔私達が日本で見てきたゾウは狭い檻で異常行動を繰り返すかわいそうなゾウです。本来の行動を私は宇都宮動物園で見たことがありません。

④動物の福祉には「動物の5つの自由」というのがあります。それと宇都宮動物園の飼育環境を当てはめてみました。


1.飢えや渇きからの自由(Freedom from Hunger and Thirst)

(1) 健康を維持するために栄養的に十分な食餌を与えられている。

(2) きれいな水をいつでも飲めるようになっている。


宇都宮の場合は、決まった量やを与える訳ではありません。その日その日で手に入った餌を与えるという感じです。パンの耳・おからのみとか、その辺に生えている草だけだった日もあります。水も壁に取り付けてある水道管から出てくる少量の流れてくるものを時間をかけて吸い込み飲んでいます。

リサーチした他園では主食として乾牧草を与え、補助食としてリンゴやニンジン、サツマイモなどの根菜や、草食動物用ぺレットを与えています。不足しがちな栄養素は、えさにまぜたビタミン剤などで補給しています。


2.不快からの自由(Freedom from Discomfort)

温度、湿度、照明など、それぞれの動物にとって快適な環境を用意できている。

(1) 自由に身体の向きを変えることができ、自然に立つことができ、楽に横たわることができる。

(2) 清潔かつ静かで、気持ちよく休んだり、身を隠すことができる。

(3) 炎天下の日差し、雨風を防ぐことができる。

(4) キツすぎる首輪など苦痛のある飼育環境にいない。

など


狭い運動場なので動作が少ないです。横たわることが出来ない狭い運動場に46年間閉じ込められています。体は日々清潔に保たれておらず、象本来の大好きな水浴びもさせてもらえてません。飼育員は「宮子は水浴びが嫌い」でプールに入らないといわれますが、体が小さい頃なら入ったかもしれませんが大きくなった体を沈めるには不十分な大きさです。宇都宮動物園の象管理者は言い訳をつけて「宮子は水浴びが嫌い」と言います。しかし、数年前のインタビューには「水浴びが好きでもっともっととせがむんだよね」と回答しています。

宮子さんの放飼場には日よけがありません。コンクリの上は私たちが想像出来ないくらい気温が高く熱いと思います。そんな場所で酷暑の中過ごさなくてはいけないというのは何かの拷問なのでしょうか?自然にいれば森林など奥深くに過ごすアジアゾウです。逃げ場のない場所に閉じ込める事が宮子にとって幸せな事なのでしょうか?

※ 身動きのできない狭い場所、日よけのない炎天下、雨風や騒音などにさらされている、といった飼育環境は動物にとって好ましくはありません。


3.痛み、外傷や病気からの自由(Freedom from Pain, Injury or Disease)

(1) 怪我をするような危険物のある環境にいない。

(2) 病気にならないようにふだんから健康管理をしている。

(3) 痛み、外傷あるいは疾病の兆候があれば、十分な獣医医療が施される。


足元がコンクリなので体の大きな象には間違いなく負担がかかり、日本にいた象の多くが足の負担から起立不能になり崩れ落ち、内臓を圧迫し死亡するというデータが多くあります。日本国内でコンクリートの放飼場なのは、今年死亡した帯広動物園のナナさんと、宇都宮動物園の宮子さんだけです。宮子さんの為にも一日も早い改善を求めています。


4.本来の行動する自由(Freedom to behave normally)

(1) 各々の動物種の本来の生態や習性に従った自然な行動が行えるようにする。

(2) 群れや家族で生活する動物は同種の仲間と生活でき、また、単独で生活する動物は単独で生活できる。


宇都宮動物園の宮子さんの放飼場では自然な行動は絶対に難しいです。大規模な改善をするにはお金が掛かります。それなら、しっかりとした施設に移動させることをお願いしたいです。アジアゾウは群れで生きる動物です。仲間に出会えた時の感動を宮子さんにも生きているうちに感じて欲しい。そして、他園へ移動することは宮子さんにとって生活の質の向上にも繋がります。宇都宮は46年間現状維持でやってきました。飼育環境の改善は難しいと思われます。

5.恐怖や苦痛からの自由(Freedom from Fear and Distress)

(1) 精神的苦痛、過度なストレスとなる恐怖や不安を与えず、それから守ること。

(2) 動物も痛みや恐怖、苦痛を感じることを理解し、もしその兆候があれば原因を特定して軽減に努めること。

狭い場所で46年間我慢して過ごしています。

ゾウは人間に近い感情を持つといわれている動物です。あの狭い場所で暴れもせずただじっと過ごす宮子さんにどのくらいの我慢を強いているのでしょうか。インドで象を大人しくする調教がありますが、1週間身動きが取れないように体を拘束し、フックで体を痛め続けるそうです。象の心が壊れたら従順になるそうです。私は象の表情をよく観察していますが、宮子さんが諦めたような目をしているのをよく見ます。以前園長が私に「死ぬまでこのままですよ」って言われた事を思い出します。象は頭のいい動物です。福山市動物園にいるボルネオゾウふくちゃんの飼育員さんもおっしゃっていましたが「ゾウは人を見て配慮出来る動物」なんだそうです。宮子さんの諦めの目の理由は、宇都宮動物園に原因があるような気がします。


【要望です】

要望1:宇都宮動物園は、ゾウの宮子さんを手放し、群れ飼育が可能な施設へ移動させること(日本国内では、市原ぞうの国が実績あり)

ゾウの飼育の実績のある園へ移動をお願いします。一度連れてきた大型動物の移送は大変なことですが、不可能なことではありません。また日本初の倫理的な取組みとして社会からの評価を得られることも間違いがありません。


要望2:上記移動が実現するまで、施設面と行動面でのエンリッチメントを行うこと

(エンリッチメントの例です)

①屋外面積を1,000平方メートル以上に広げること

②砂および土の地面、複雑性のある地形やデザインに変えること

③水浴ができる水場を作ること

④行動欲求を満たす刺激を与え続けること

⑤ゾウのエンリッチメントのための数名スタッフを配置すること(現在は1名で対応)

上記以外にも様々なエンリッチメントの方法が海外で確立されています。本来活発に動く16時間を満たすための環境および行動エンリッチメントを行って欲しい。

※国内外の専門家(動物園関係)に意見を聞いて早急に対応をしていただきたいです。


要望3:宮子さんを最後に、今後ゾウを飼育しないこと

ゾウを適正に人間が飼育することは大変難しい事です。海外の多くの動物園がゾウの飼育を辞めることを宣言しています。ゾウを適正に飼育できないことを認識いただき、宮子さんが居なくなった後、ゾウを二度と飼育せず、檻に閉じ込めないという判断をして下さい。


要望4:環境教育の方法、考え方について、再検討し、正しい自然や動物との関係性を学ぶことの出来る方法に変えること。

宇都宮動物園の運営として、生きた動物との触れ合いが含まれていますが、通常、見知らぬ人から触れられることでストレスを感じない動物はいません。人と動物との関係、人と自然との関係を学ぶ上で、動物に一方的にストレスを与える方法をとることは、正しい関係を学ぶことにつながりません。


手軽に用意された動物との接触で、正しい人と動物との関係、人と自然との関係を学ぶことはできません。


改善の方法は上記以外に多くあります。どうか、寿命までのあと約20年を、人間のためではなく、宮子さん自身のために使えるよう、改善をして下さい。小さなことでも構いません。なにかしらの改善をしていただけますよう、切にお願い致します。

また、宇都宮動物園についても、人の視点だけでなく、動物の視点を新たに加え、動物の生活の質(QOL)を重視し、そこに暮らさざるをえない動物たちにとっての適切な飼育環境が保持されることを前提として下さい。

4点の要望についてご検討いただき、栃木県のお考え、対応を教えて頂けますよう、よろしくお願い致します。


2020.6.11  

深草※

「宮子さんにも動物福祉に沿った生活をする権利があります。一日も早い、環境改善を願います。」

象をめぐる冒険

日本にいるゾウがみんな幸せでありますように。

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