エンリッチメント
フィーダーでご飯を食べる北海道札幌市の円山動物園のパール。
冬になると厳しい寒さで円山のゾウたちは室内で暮らすことになります。ゾウたちのストレスが減るようにさまざまな工夫のされている室内放飼場。アラン氏の監修の元、エンリッチメントが進められています。
アラン氏とは⇒
アラン・ルークロフト。欧米が取り入れている飼育法「準間接飼育(プロテクテッド・コンタクト)」を生み出した。円山動物園がゾウを導入するにあたっては、外部コーディネーターとして参加。
エンリッチメントとは、「豊かにすること」「充実させること」などを意味します。動物飼育のエンリッチメントは動物がより生き生きとした充実した毎日を過ごせる飼育環境を提供することです。欧米では1980年代からその考えを取り入れ、確立したのがエンリッチメントで動物たちが動物園で過ごす「時間」と「空間」と「思考」を充実させ、ゾウたちの感覚を刺激することに力を注いでます。
〇ゾウ飼育のエンリッチメント
ゾウ飼育に取り入れられている環境エンリッチメントを大きく分けると
①給餌
②施設
③トレーニング
になります。
①「給餌」は、ただ用意された餌を食べるだけではなく、探索や移動を促して本来の採食行動に近づけるようにします。たとえば「フィーダー」というエサ入れに餌を食べにくく仕組んで、時間をかけて食べるようにします。また餌を毎回違う場所に隠したり、高い場所につるしたりして、時間をかけて探索させることで頭や体を使わせるようにもします。
②の施設の充実は、本来の動きが発現できるように飼育エリアに工夫をすることです。放飼場内に木やタイヤを吊るし、頭や牙突き遊び等ゾウが好きな行動が出来るようにします。広いプールや砂場を用意すれば、砂遊び・水遊び・泥遊び・土掘りなどの行動レパートリーを増やすことが出来る。
③トレーニングはゾウの学習や記憶能力を利用しながら知的好奇心を刺激する効果が得られます。
〇暇を減らし、時間を充実させる
ゾウの飼育の現場では様々な取組で行動レパートリーを増やし、「暇な時間を減らす」ことで常同行動(同じ動作や同じ場所を行ったり来たり、ダンスをしているように体を揺する等)ストレス行動(自分の糞を踏み散らかしたり、投げたりする行動)などの問題行動が起こらないように努めなければなりません。